果たして人に嘘をつかせるSCiPなのか、それとも人に嘘をつかせないSCiPなのか。 SCP-1600-JPが巧妙に作り上げた嘘であるのか、それとも財団が巧妙に作り上げた嘘であるのか。 書類上はどちらだとしても矛盾が生じないが、SCP-1600-JPの言及を今から口にすればすぐに確認できるではないか。 ・・・ああ、なんということだ。SCP-1600-JPへの言及は何も引き起こさなかった。これはつまりどういうことだ? 仮にSCP-1600-JPが正直に話させる異常性を持つと仮定しよう。とするとこの報告書はひどく杜撰だ。 SCP-1600-JPの理解に少しでも誤解があれば無力化できるなら、財団がそれを行わずに報告書を書くわけがない。 なぜ、あえてSCP-1600-JP-1となって報告書を書いた? なぜわざわざ機密情報を漏らすリスクを負った? 私が考えるに、この執筆者はSCP-1600-JP-1でないにも関わらず、SCP-1600-JP-1を装って報告書を作っている。 「なんつってね、」以降が全てが真実であるように見せかけて、実際はその部分さえも機密防止のために虚偽を含んでいる。 おそらく、それはサイト-8128には存在しない。それはコルクボードではない。パスワードも管理者の指紋も全てデタラメであり、それどころか八百真治というサイト管理者さえも存在しないだろう。 この一連の手続きにより、我々職員はこの報告書の何が虚偽であるか分からない、かつどちらの性質かを確信できない状態になった。 これにより、SCP-1600-JP-1となるリスクを抑え、機密情報を秘匿しながらにして、収容違反への対応方法を知ることができたわけだ。 仮にSCP-1600-JPが虚偽を話させる異常性を持つと仮定しよう。 報告書が正しいのであれば、言及のときに異常性が発生するはずだ。 つまり、これは虚偽を話させるオブジェクトではない。 あるいは、考えたくないことだが、「なんつってね、」以前さえも異常性によって形作られた虚偽である。 この場合、財団は今も収容違反に直面している可能性さえあるが、どこまでが虚偽か全く分からない。 なぜ私はセキュリティロックされている報告書に、意味もなく自分の考察を書き込もうとしてるんだ? なぜなら私は今、簡単な実験として、無根拠にも片方が正しいと思い込んでみたからだ。 そして、私が暴露されてしまったからだ。 今ならSCP-1600-JPに口頭で言及すれば、異常性がどっちなのかすぐに確認できる。 ああ、つまりSCP-1600-JPは人に正直に話させる異常性を持っていたんだな。