SCP-1730-JPについて 拝啓 財団職員様へ
職員皆様におかれましては益々のご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、誠にありがとうございます。
さて、まずは私が番号を予約してしまったためにご迷惑をおかけすること、深くお詫び申し上げます。誠に申し訳ございません。
つきましては、私が予約に及んだ経緯の説明と弁解をさせていただきたいと思います。
事の発端は一昨年の春のことです。異常存在の創作が趣味の私は、2年の歳月を掛け、ついに個人で初作品を創り出すことに成功いたしました。しかも初心者には作るのが難しいといわれる人型の異常存在です。嬉しさのあまり「長男」と名づけ可愛がりました。そして準備が整った来月、一般公開することを決めたのです。
そこで長男は3時間で15人という素晴らしいスコアを出してくれました。初作品ゆえの不安もありましたが、この結果に製作者の私も出来栄えに満足し、得意な心情で会場の様子を見学していました(もちろん、カメラを通してですが)。
ですが、悲劇があいつを襲いました。……わかっています、本当は悲劇などではありませんね。全ては私の責任です。悔やむ権利などないのは承知しています。……ですが、ですがどうしてもここでの告白と懺悔をお許しいただきたいのです。
ああ、時刻まで覚えています。20時間後、あいつら、あの忌々しい『世界オカルト連合』のやつらに襲撃されたのです! 痛みにうめく長男が檻に入れられる様子は、いまだに悪夢として残っています…。長男が捕獲された直後、私は「初作品にしては上出来だ」とか「長男はよく頑張ってくれた。もう十分だ」と考えることで責任から逃れようとしていました。しかし、長男が捕獲されてからしばらく経ち、長男の生命反応が途切れたとき、私の目の前が真っ暗になりました。手垢に塗れたクリシェではありますが、それが事実起こりうることを身をもって体験することとなったのです。一般公開という形をとっている以上、製作者である私から離れることは仕方ありません。親離れの一種でしょう。しかし、破壊されることは想像を絶する苦しみでした。
途轍もない罪悪感と自責の念、虚無に包まれた放心状態の私だけが、長男と過ごした研究室の中に、1人、取り残されました。
それから私は長男への贖罪のため、精一杯働きました。研究所仲間に原因を聞いたり、サーカスの変異者に対策を考えたり……長男を失った悲しみを埋めるようにがむしゃらに道を探しました。
そこで見つかったのが、あなたたち、財団なのです。財団なら私の作品を破壊しない、それどころか作品とともに生活し、保護までしてくださる。私にとって、いえ、全ての異常存在創作者にとって財団は理想郷なのです!もちろんただとはいいません、小切手をにぎらせておきます。また、予測される報告書も同封いたします。是非活用してください。
拙作の収容と保護の方、どうかよろしく頼みます。
略儀ではありますが、取り急ぎ書面にてお詫びとお願いを申し上げます。今後ともよろしくお願いいたします。
敬具
追記:出来上がり次第、すぐに公開いたします。また、May Gimson様の御快復と母子双方の健康を心よりお祈り申し上げます。